ライフストーリーVol.1〜やりたいことがわからない会社員時代〜

「やりたいことがわからない」で悩む日々の始まり

大学を卒業した僕は、誰もが知る大企業で、人事として働くことになった。

それだけでもありがたいのに、就職氷河期なのに、第一志望。

世界一入りたくて仕方なかった会社で、キャリアをスタートさせられた僕は、世界一の幸せ者だった。


だから入社前は、大好きな会社で働くことが楽しみで、晴れ渡る春の日のようなウキウキ感があった。

でも、いざ働き始めると、ウキウキ感とは正反対な、どんよりとした雲に覆われたような日々が始まった。


充実していた新入社員研修が終わり、職場に配属された僕を待っていたのは、【希望】ではなく【絶望】だった。

一言で言ってしまうと、仕事が楽しくなかった。



「大好きな会社で働く」


という夢を実現したのに、びっくりするくらい、仕事がつまらなかった。

事務書類に印鑑を押し、上に許可をもらうためだけに資料をつくり、形式だけの会議に出席する日々。


そんなモヤモヤを抱えたまま、配属されてから、1ヶ月が経ったある日のこと。

ミスをして暗い顔で仕事をしていたら、可愛がってくれていた先輩に、衝撃の一言を言われた。


「仕事ってのは、
 嫌なことをするから、
 お金がもらえるんだよ」



今思えば、僕を元気づけようとしてくれたのかもしれない。

軽い気持ちの冗談だったのかもしれない。

でも、その言葉を、そのまま受け取った当時の僕は、こう思ってしまった。


「それってある種の奴隷じゃないか」


その時、悟った。

「これは何かを変えないとまずい」って。


だけど、何を変えたらいいのかわからなかった。

今の仕事がやりたくないことはわかる。

でも、「じゃあ、何がやりたい?」と自分に問いかけても、全くわからなかった。


「やりたいことがわからない」


これから悩みに悩む、
約3年間の日々の始まりだった。

がむしゃらに行動しても結局「わからない」

何がやりたいかわからない状態で、転職しても結局また同じ。

だから、まずは、やりたいことを見つけることにした。

そして、3年以内に会社を辞めることを決めた。



そう決めたその日から、担当業務も一人前にこなせないのに、やりたいこと探しで頭がいっぱいになった。

「やりたいことがわからないのなら、とにかく行動しまくるしかない」


そう思って、忙しい日々の中、仕事以外の時間は、とにかく行動第一で動きまくった。



深夜まで続いた残業はきつかったし、使える時間も限られていた。

でも、それ以上に、自分が全力で夢中になれるような、「やりたいこと」を知りたかった。



本を年間100冊読んだ。

誰も知り合いのいない勉強会にも、ネットで調べて、片っ端から参加した。


関西からわざわざ東京までビジネススクールに通った。

長期休暇には、バングラデシュへ1人旅もした。


留学関連のビジネスで仲間と起業しようと思い、そのために大学生のふりをして、大学に潜り込んでセミナーを受けたりもした。



やってみたことで、興味がないことはなかった。

でも何をやっても、「これだ!」というしっくり感がなかった。


まるで永遠に抜け出せない、アリ地獄にハマったような感覚に、僕はなっていた。

飲み会の途中でトイレに籠って大泣きする

やりたいこと探しを第一優先にして、仕事を疎かにしていたから、本業も散々だった。

もともと僕は超優秀で、バリバリに仕事ができる人間ではない。

人一倍、努力をして、やっと人並みにできるタイプ。



なのに、仕事に真剣になっていなかったから、THEダメ社員だった。


人事の仕事は基本ミスが許されない。

そんな中でミスを連発し、上司や先輩に怒られることも珍しくなかった。

一番ひどい時には、100人以上がいる職場の中で、声を上げて大泣きしたこともある。



これでもお酒の席で活躍できるなら、まだ救いようがあるのに、生ビールすら飲めない僕はダメダメだった。

というのも、会社の仕事より、会社の飲み会が何百倍も嫌いだったから。



そんな態度が出ていたのか、先輩の送別会での飲み会でのこと。

お偉いさんに目をつけられ、いじるを超えたレベルで、執拗ないじめを受けた。



そして、なぜか僕は、朝一番に出社して、部署全員分の机拭きを毎朝することを命じられた。


「自分はなぜ好きでもない仕事をして、
 好きでもないお酒を飲まされ、
 いじめられているんだろう。」



そんなことをふと思ったら、飲み会の途中なのに涙が止まらなくて、酔ったふりをしてトイレで泣いた。

翌日の朝、出勤して、誰もいない暗いオフィスに入り、雑巾を濡らして机を吹き始めた僕は、もうどうすればいいかわからなくなっていた。