ナマステ!
久々に読んでいて痺れる小説に出会いました。
その名もこちら!
「神々の山嶺」!
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/06/25
- メディア: Kindle版
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/06/25
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ネパールのヒマラヤ山脈を舞台にした山岳小説です。
でも登山なんて興味ない僕でも、夢中になって一気に読んでしまいました。
それくらい、とんでもなく面白い作品だったので紹介しようと思います。
あらすじ:写真家と登山家×エベレスト登頂の謎×カメラ
Amazonよりあらすじを引用します。
カトマンドゥの裏街でカメラマン・深町は古いコダックを手に入れる。
そのカメラはジョージ・マロリーがエヴェレスト初登頂に成功したかどうか、という登攀史上最大の謎を解く可能性を秘めていた。
カメラの過去を追って、深町はその男と邂逅する。
羽生丈二。伝説の孤高の単独登攀者。羽生がカトマンドゥで目指すものは?
主人公の深町は山岳カメラマン。
エベレスト登頂に挑戦するも、登頂を断念。
その際に、一緒に登っていた仲間が事故死してしまった。
そんな失意の中で、深町は偶然1台の古いカメラを見つけるところから物語が始まっていきます。
舞台は僕が今住んでいるネパールです。
基本的にはネパールを舞台に、主人公の深町と、伝説の登山家・羽生の2人を軸に物語が進んでいきます。
ここからはこの作品がなぜめちゃくちゃ面白いのか、その魅力を語っていきます。
(1)実在するヒマラヤ登山史上最大の謎が面白すぎる
この物語の核となっているのは、ヒマラヤ登山史上最大の謎です。
その謎と深く関連するカメラを深町が見つけ、隠された謎を解き明かしていくことで、物語が進んでいきます。
そして、その謎というのが、1924年にジョージ・マロリーというイギリスの登山家がエベレストの登頂に成功したか否か。
残念ながらマロリーはエベレスト挑戦中に、何らかの事故に遭い、亡くなってしまいました。
なので、「もう死んでるなら確認しようがないやん!」って思うかもしれません。
でも実は1つだけ確認する方法が残されています。
それは、マロリーが持っていたカメラのフィルムを現像すること。
そのフィルムにエベレスト頂上からの写真が映っていれば、エベレスト登頂に成功したことが分かる。
もし写真があれば、人類史上初めてエベレスト登頂に成功した年が現状の「1953年」から大きく書き換えられます。
しかも!マロリー自身の死体は見つかっているのに、そのカメラはまだ見つかっていないんです。
本のあとがきより引用します。
マロリーが、エヴェレストの頂に、誰よりも最初に立ったのかどうか。
それを知るには、マロリーの屍体と共にあるはずのカメラの中からフィルムを取り出し、それを現像すればよいのである。
これを知った時に、閃めいたのが、本書のアイデアである。
これはいける。
エヴェレストの八〇〇〇メートル以上の場所にあるはずのカメラが、カトマンドゥの街で売られていたらどうなるか。
売られる前、そのカメラを、持っていたのが日本人だとしたら…
しかも!この謎はびっくりすることに、実在する謎です。
仮に作り話だったとしても素晴らしいですが、本当に実在する謎なだけに、リアリティがたまりません。
(2)まるで自分が登山しているかのような臨場感がすごい
この小説の魅力は、まるで自分がエベレストに登っているかのような臨場感。
これがまたすごいんです。
僕なんて、登山経験ほぼなしです。
実際登ったことがある山なんて、高尾山くらい。
高尾山もハイキングみたいなもんなので、山登りとは言えないだろうけど。
そんな僕でも、読んでいるときは、実際にエベレストを登っているかのような感覚に陥りました。
こんな描写もしっかりされているので、エベレストという未知の世界がどんな場所なのかがよく分かる。
地上の半分以下の酸素の中にいると、レンズのフォーカスを合わせ、シャッターを押すだけで、息が切れる。
シャッターを押す時は、一瞬、呼吸を止める。
その、ほんの一瞬呼吸を止める状態が、ほんの二秒も長くなっただけで、シャッターを押し終えた後で、喘いでしまうのだ。
シャッターを押し終え、ごうごうと音をたてて呼吸をする。
登山小説だけに登山用語も結構出てきます。
全く知らない単語が出てきても、僕はそれでも物語に入り込めたので大丈夫です。
(3)小説なのに、自分の生き方を問いかけられる作品
ヒマラヤ史上最大の謎も面白いし、登山している感覚に陥るのもすごい。
でも、この作品の一番の魅力はと問われれば、僕は迷わずこれを言います。
それは小説なのに、自分の生き方を問いかけられるというところです。
この本を読み終わって僕はまず一番に思ったのは、「何のために自分は生きているのか」ということ。
そして、その問いをぶつけてくるのは、伝説の登山家・羽生丈二です。
彼の生き方が衝撃的すぎて、一小説だということを忘れます。
彼がなぜネパールにいたのか。
どうして伝説と言われているのか。
そもそも、何のために彼は生きているのか。
ここで書いてしまうと、小説を読む楽しみがなくなるので言いません。
ぜひ中身を読んで、どっぷり世界観に浸かる中で考えてもらえればと思います。
著者の夢枕さんのあとがきを読めば、どれだけの熱量が込められた作品なのか分かります。
書き終わって、体内に残っているものは、もう、ない。
全部、書いた。
全部、吐き出した。
力およばずといったところも、ない。
全てに力がおよんでいる。
十歳の時から、山に登って体内に溜め込んできたものが、全部出てしまった。
それも、正面から、たたきつけるようにまっとうな山の話を書いた。
変化球の山の話ではない。
直球。力いっぱい根限りのストレート。
もう、山の話は、二度と書けないだろう。
これが、最初で最後だ。
それだけのものを書いてしまったのである。
これだけの山岳小説は、もう、おそらく出ないであろう。
それに、誰でも書けるというものではない。
どうだ、まいったか。
まとめ
山岳小説「神々の山嶺(かみがみのいただき)」が登山に興味がないあなたにも突き刺さる理由を紹介しました。
ヒマラヤ史上最大の実在する謎を解き明かしていくワクワク感。
登山経験がなくても、まるで登山しているかのような臨場感。
そして、小説なのに、自分の生き方をまでも問いかけられる深さ。
どれをとっても素晴らしい作品です。
- 作者: 夢枕獏
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2015/06/25
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2016年3月には映画化もされました。
阿部寛さんがぴったりすぎる!
予告編はこちらから!
映画『エヴェレスト 神々の山嶺』公式サイト 岡田准一主演。世界的大ベストセラー映画化!
- 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店
- 発売日: 2016/09/09
- メディア: DVD
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純粋に作品を楽しむだけでなく、ネパールという国に興味を持ってもらえたら嬉しい!