Kei's Way@Nepal

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僕はネパールを変えることができない。

~ネパール在住青年海外協力隊が贈る、生き方に悩む20代が前に一歩踏み出したくなるブログ~

農業経験なしの日本人がネパールの農業専門学校で講義をしてきました

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ナマステ!

先日、青年海外協力隊の活動の一環で、ネパールの農業専門学校で講義をしてきました。 オファーがあったときは、超心配で、どうなるかと思いました。 何せ、僕は農業経験が全くないのに農業支援をやっている隊員なので…。

なぜ、講義をすることになったのか。 どんな内容の講義をしたのか。 そして、結果はどうだったのか。

ここら辺の話を写真を交えながら紹介していきたいと思います。

ちなみに僕の活動の概要に関しては、こちらをどうぞ!

www.keikawakita.com

実施の経緯:1人の生徒よりオファーが来る

そもそも、今回の話が始まったのは、農業専門学校に通う1人の生徒からオファーを受けたからです。

その1人の生徒というのは、僕が一緒に活動をさせてもらっている婦人協同組合のリーダー。 このリーダーの方が非常に意欲的な人なんです。 主婦として子育ても農業もやりながら、10歳以上若い子たちと一緒に専門学校で勉強しています。

思えば、僕がこの村で活動をすると決めたのも彼女の存在があったから。 そのリーダーの方の家で、稲刈りを手伝っていたある日、突然こんなことを言われました。

「ビカスはコミュニティ開発のプロなんでしょ!うちの学校で今度講義してよ!」

そう言って、ネパールの農村がどうやったら、今よりも豊かになれるかについて講義をしてほしいと頼まれました。 ちなみにビカスってのは僕のネパリネームで、「開発」「発展」っていう意味。 訓練所時代の先生が「コミュニティ開発だからビカスだ!」とつけてくれました。単純すぎ!

そんな軽い話から講義をやることが決まりました。 本当にできるのか不安もありましたが、嬉しいという気持ちの方が強かった。 なにせ初めてお願いされた仕事だったんです。

これは絶対成功させようと思い、内容を考え始めました。

狙い:「加工品をやろう!」とリーダーに思ってもらう

さて、内容をどうするか。 言われているテーマは「ネパールの農村がどうやったら今よりも豊かになれるのか」という漠然としたもの。 テーマが広い分、内容はどうにでもなると思い、この講義の目的とリーダーの人に何を伝えたいかを考えました。

僕の話を聞いたことで、リーダーにどんな行動を取ってほしいか。 どんな考えを抱いてほしいか。

考えた結果、出てきたのは「加工品をやろう!」という気持ち。 村の農産物を使って、新しい製品をつくりたい。 僕の話を聞いて、こんな風に思ってほしいと思ったんです。

そう考えたのは、村の人達が抱える課題の解決策になると思ったから。 3ヶ月間、村の人達と一緒に農作業や市場での野菜売りに同行してこんな課題が見えてきました。

課題①:農作物の単価が市場で決まっており、価格決定権がない
課題②:農作物の収穫が減る乾季は、収入が劇的に落ちる

単価が決められてしまっている以上、売る量を増やすしかない。 でも加工品であれば自分たちに価格決定権があるので、そうはならなくて済みます。 また、保存が効く加工品が作れれば、乾季にも売るものを持つことができます。

「加工品をやろうよ」とリーダーには何度か言ってきました。 でも思い返せば、なぜやる必要があるのかをしっかり説明したことはなかった。 なので、この機会にしっかり説明して、理解してもらおうと考えました。

加工品はネパールの地方が抱える課題も解決できる

加工品のことを調べていくうちに、面白いことが分かってきました。 それは、ネパールの地方が抱える課題も加工品で解決できるということです。

都市から遠いネパールの地方の農家はこんな課題を抱えています。

農作物が売れる都市から遠い⇒輸送に時間がかかる⇒農作物が腐敗、破損⇒農作物を作っても売れない

地方部にある農作物を大量に輸送すること自体大変です。 この国には、日本みたいに整った高速道路があるわけでもないですから。 そして苦労して輸送しても腐ったり、傷んだりしてしまいます。

でも保存が効く加工品なら腐ったり、傷んだりする心配は減ります。 加工品であれば農産物を直接輸送するよりは重さもだいぶ軽くなります。

僕が講義をすることになった農業専門学校に通う学生たちのほとんどは地方出身者です。 車で2~3日かかるような田舎からカトマンズに来ています。 そういった地方出身の学生たちにも、加工品の話は刺さるだろうと考えました。

テーマとアウトラインはこちら!

そういうわけで、結局話すテーマと大枠の内容はこんな感じにしました。

◆講義名:「ネパールの農家の所得向上」

◆目次:
①イントロダクション
②「開発」の意味
③ネパールにおける農業開発の問題点
④加工品の活用
⑤まとめ

いきなりコアの③、④から話を始めようかなとも思いました。 ただ、そもそも開発ってなんなんだ、開発をするためには何が必要なんだっていう話もしたかったので②も入れました。 結果的にいい意見もたくさん出たので、入れてよかったなと思います。

ポイント(1)ワークの時間を設け、主体的に考える

ここからは実際にどんな風に講義を進めたのかを書いていきます。

今回、意識して入れたのは「ワーク」の時間です。 要は、こちらから一方的に教えるのではなく、自分で意味を考えたりグループで議論する時間を入れました。

下見で普段の授業を見学させてもらったときに思ったのが、もっとワーク形式の時間があったらいいのになということでした。 ネパールの教育の課題とも言われていますが、自分で考えることって大事です。 自分の頭で考えたり、他の人と意見をぶつけたりすることで初めて気づくことがあります。

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今回は最初に「開発」の定義についてみんなで考えてもらいました。 そして、いくつかのグループに自分たちが考えた定義を書いてもらいました。

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こういう定義ものに唯一無二の答えはありません。 だからこそ、自分の考えが他の人とどう違うのかを知ることが大事。 クラスも盛り上がったし、やってよかったなと思います。

ポイント(2)ネパールの農業の主要な問題は”3P”

ネパールの農業の問題点も考えてほしかった内容です。 なので、これも僕があれこれ教える前にまずはみんなで考えることをやりました。 さすが農業専門学校の学生なだけあって、でるわでるわ。

でも主要な問題は3つかなと僕は考えたので、頭文字を取って「3P」であるとしました。

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Priceは、価格決定権が農家にないこと。 Placeは、地方では販売する市場がないこと、また都市までの輸送が難しいこと。 Productは、農家の農業知識が不足していること。

これが主要な問題であると考えました。

ポイント(3)「収入=単価×数量」という式

そしてこれが今回、一番伝えたかったこと。 「収入=単価×数量」という式。 なぜなら、これをしっかり理解できれば、収入向上に何が必要なのかが分かるからです。

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ネパールの農産物は市場で価格が決められています。 よって、「単価」の部分を自由に変えることは難しい。

「単価」が変えられないなら、「数量」を上げないと収入は増えません。 でも「数量」を増やすっていうのは農家にとっては難しい。

生産量を増やすためには、2つの方法しかありません。 1つは畑を大きくして、単純に生産量を上げる。 もう1つは、畑の大きさは変えずに、技術革新で生産効率を上げる。

でも、どちらも非常に難しいです。 現状から大きな変化が必要なので、簡単にできることではありません。

ということは、「単価」の部分を変える方が現実的。 そしてその単価を変える方法というのが、「加工品」というわけです。

ポイント(4)加工品をやるメリット

先程の式の流れから、「単価」を変えるためには「加工品」がいいという話をしました。 価格決定権が農家にある、保存が効くので輸送の問題もクリアできるなど具体的なメリットをいくつか紹介しました。 そして、その後に、実際にネパールにある身近な例を出しました。

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写真の左側にあるのは、ネパールの特産「ラプシー」という果物。 右側はそのラプシーを加工してできたキャンディ。 果物のままだと1kg40ルピー(日本円で約40円)ですが、キャンディにすると1kg400ルピーになります。

価格が10倍です。 これを事例として紹介したのですが、非常にインパクトがあったみたいです。

そして、このラプシーのキャンディですが、そんなに難しいわけでもない。 皮と種を剥いで、実を煮沸して砂糖を入れて、乾かして、小さく切ってラッピング。 それだけです。

「加工品は機械がないとできない」みたいなイメージを持っている人が多いのでその点でも良い例になりました。

最後の方では僕のこんな話もしました。

www.keikawakita.com

これにはさすがにみんな驚いていました(笑)

評価は上々!リーダーも加工品の良さを理解!

こんな感じで1時間の講義を終えました。 評価は上々で良かったんじゃないかと思います。 実際に聞いてくれた学生の子、専門学校の先生も「非常によかった、知らないことが知れてよかった」などと言ってくれましたし。

肝心のリーダーもこんなことを言ってくれました。

ビカスが話す前は、どんな感じになるかとてもドキドキしてたよ。心配だったし。 でも本当にいい話でよかった!ありがとう!

加工品が売られているマーケットがあるのですが、今度そこに一緒に行くことに同意してくれました。 なので、加工品のメリットもある程度は理解してくれたのかなと思います。

この熱が冷めないうちに、早めに次の展開に持っていきたいところです。 引き続き、頑張ります!

まとめ

農業経験なしの日本人がネパールの農業専門学校で講義をしてきました話を紹介しました。 最初はどうなるかと思いましたが、やってみると案外できるもんです。 自分の考えをまとめる機会にもなるので、こんな風にプレゼンをするのもおすすめです。