Kei's Way@Nepal

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僕はネパールを変えることができない。

~ネパール在住青年海外協力隊が贈る、生き方に悩む20代が前に一歩踏み出したくなるブログ~

ネパールが大地震直後よりも危機的な状況に陥っている理由

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ナマステ! ネパールを襲った4月の大地震から半年以上が経ちました。 ようやく復興に向けて少しずつ動き始めています、と書きたいところですが、現実には復興どころではありません。

ある意味地震の時よりも、むしろ人々の生活は一層苦しくなっていて、危機的な状況に陥っています。

ところが、日本ではこの危機がほぼ報道されていないみたいですね。 最近、友達とLINEをしましたが、そのことを僕が話したらびっくりしていました。 僕はびっくりされたことにびっくりしました。

今、現在ネパールで何が起こっているのか。 今回はそのことについて書いていきます。

ガソリン・調理用ガス・医薬品が危機的に不足

日本大使館から在ネパール邦人に向けて送られてきたメールを転載します。

大使館からのお知らせ(15-88)

                   11月20日

ネパールの治安情勢等

1 治安情勢
 マデシ系の統一民主マデシ戦線は、「ティハール及びチャトの祭り終了後、現在行っている抗議活動を更に強化する」旨、述べているところ、今後、イ ンド国境地域の多くの地域で抗議活動が激化する可能性があります。
11月21日(土)からは、タルー系グループもインド国境地域で抗議活動を実施すると述べています。

2 燃料の供給
 報道によれば、ネパール国内における石油製品の供給量は常時の25%程度です。
また、ネパール税関は、タライの抗議活動が始まる前は、1日あたり平均200台のタンクローリー車がネパールへ入境していたが、10月中旬~11月中旬で、1日あたり平均51台のタンクローリーしか入境していないと発表しました。
また11月18日、当館からネパール石油公社(NOC)関係者に確認したところでは、石油製品の国内貯蓄量は改善していないということです。

3 医薬品の供給
 ネパール政府は、医薬品の不足を問題視しています
他方、報道によれば、19日、統一民主マデシ戦線は、現在、継続中の抗議活動遂行に当たり、東部ビラトナガルの国境における医薬品等の搬送については妨害しないと述べています。

  4 航空便(国際線)の状況
(1)中国東方航空
 一時運行を中止していましたが、今週より週3便の運航を開始しています。
(2)中国南方航空
 12月31日まで、現在のところ運航をキャンセルしています。
(3)その他国際線
 基本的には通常運行です。

5 航空便(国内線)の状況
 基本的に通常運行です。

(国際線及び国内線の状況は、中止・変更の可能性がありますので、御利用の各航空会社から最新の情報を入手して行動するよう心がけて下さい。)

要は、ガソリンなどの燃料、さらには医薬品が危機的に不足している状況にあります。 またここには書かれていませんが、調理用ガスも不足が深刻です。 燃料類は生活必需品ですし、医薬品は病人にとってはないと生死にかかわります。 なので、今、ネパールは非常に大きな問題を抱えていると言えます。

原因:復興のために制定した新憲法によりインドが国境を封鎖

なんでこんなことが起きているのでしょうか。 原因は今年の9月20日に公布された新憲法です。

ネパールは内戦終結後の2008年から7年間、新憲法制定の議論を続けていました。 それが4月に起きた大地震からの復興を迅速に進めるべく、新憲法の制定を一気に加速させました。

それ自体はとても評価できること。 「やればできるやん!」と僕も思ったのですが、この新憲法が原因で今回の問題が起きてしまいました。

今回の新憲法で新たな県境が決められたのですが、これに不満を示したのがインドとの国境付近に住んでいる「マデシ」というインドとつながりが深い民族。 何が不満かというと、彼らが住んでいるエリアが異なる県に分割されたこと。 この県境の線引きがマデシの政治的な影響力を弱めるための策略だとマデシの人々は考え、不満を抱えています。

不満を示したマデシの人々は憲法の修正を求めています。 そして、ネパール政府が修正に応じるまでの対抗策として、インドとの国境を封鎖しました。 これにより、ネパールへの物流が止まっているわけです。

この行動に対し、インド政府は関与を否定しています。 しかしネパール政府はインド政府を疑っていて、そんなわけはないと思っているようです。 ネパールの首相もインド政府に対し、国境封鎖を早急に解除するよう求めています。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20151117-00000089-san-asia

復興どころか、日々の生活が非常に厳しい状況に

これによって、ネパールの日々の生活はどうなっているか。 一言で言うと、非常に厳しい状況になっています。

まず、ガソリン不足により、バスの本数が激減。 それにより、バスは常に超満員の状態で走っています。 本当は危ないので禁止なのですが、バスの上にまで人を乗せています。 f:id:kei-lmnop:20160519193504j:plain

カトマンズ市内のバスは今のところ値上げはされていないですが、いつ上がるか分かりません。 タクシーは通常ではありえないくらい料金が高く、2倍は見ておいた方がいいです。

さらに、調理用ガスの不足。 たまに行われるガスの供給のために、長蛇の列ができています。 f:id:kei-lmnop:20160519193622j:plain

ガスがないので、レストランはメニュー縮小、営業時間の短縮を余儀なくされています。

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頑張って薪で調理しているお店もあります。政府による薪の販売も始まりました。

比較的な裕福な人々は、電気があれば使える調理用品を買っています。 でもこれからは乾季なので、停電が10時間以上の日々が続きますのであんまり意味がないかも。 f:id:kei-lmnop:20160519193500j:plain

食料品は入ってこない物もありますが、まだ食料不足の事態にはなっていません。 医薬品については生活の中で直接かかわらないため、状況は分かりませんが、生死に直結する問題なので深刻です。

中国から燃料を輸入開始も、事態は長期化する見込み

こんな深刻な事態になっている。 でもせっかくできた新憲法をいきなり修正するわけにもいかない。 そこで、ネパール政府は中国から燃料を輸入するカードを切りました。

[FT]ネパールが中国から燃料を輸入する理由 :日本経済新聞

ただ中国から不足分全てを輸入できるわけじゃない。 そして、このカードを切ったということは、インドとの交渉も長期化する見込み。 ということは、物流停止もしばらくは続きそうです。

この事態にも負けないネパールの人々は本当にすごい

ただでさえ今年は地震もあったのに、燃料危機まで起こって踏んだり蹴ったり。 そんな厳しい状況ですが、ネパールの人は協力して乗り越えようとしています。

ガソリンスタンドには長蛇の列ができますが、争いは起きていません。 暴動が起きてもおかしくない状況なのに、全く起きる様子はない。

バスが不足しているので、なかなかバスが来ないときは、トラックなどが荷台に人を乗せてくれます。 僕も何度か乗せてもらうことがありましたが、本当に助かります。

こんなに深刻な事態ですが、外から来た観光客はニュースなどを見ていなかったら何が問題なのか分からないと思います。 それくらい、人々は落ち着いていて、協力的な姿勢が見られます。 その姿勢に僕は素直に敬意を表したいです。本当にすごい。

これが日本だったらどうなることか。考えただけでもぞっとします。

ネパールに来られる際は十分ご注意ください

ネパールは、今、観光のハイシーズンです。 トレッキングなどで来られる方も多いと思います。 観光業が主要な産業のこの国にとって、皆さんが来てくれるだけで十分復興への力になります。

現時点ではカトマンズ、ポカラについては問題なく観光できます。 ただ、この燃料危機の状況です。 レストランではメニューがなかったり、交通機関の値段が高かったりします。

今後、治安が悪化する可能性がなくもないので、最新の情報を常に手に入れるようにしてください。 このTwitterアカウントは情報が早いのでおすすめです。

twitter.com

まとめ

地震から半年後のネパールが地震直後よりも危機的な状況になっている理由を紹介しました。

新憲法の制定が原因で、インドとの国境が封鎖され、物流が停止。 それにより、深刻な燃料・医薬品不足が生じています。

事態は長期化する見込みです。 ただ、ネパールの人々は協力して危機を乗り越える姿勢を見せています。 素直にすごいなと感じています。

カトマンズ、ポカラについては現時点では問題なく観光はできますが、十分気をつけてお越しください。